初恋の話 - masakado ページ28
( you side )
西村くんと別れて、事務所から次の仕事先までの道を歩く。
電車を使えば良かったのだけれど、
あれ以上話を続けていたら嘘を重ねてしまいそうだった。
初恋くらい済ませてる、なんて言い方するんじゃなかったな……。
いやでも元彼については話すわけにいかないし……。
ーー初恋。
自分で考えてみて少し自重ぎみに笑った。
西村くんにはハズレなんて言ったけど、
たぶん人生で初めて人を
「好き」とか「一緒にいたい」と思った相手は
まぎれもなく
正門良規だったと思う。
いつからそう思っていたか自分でもわからない。
入所したばかりの頃、
男として活動していた私が女だという事実を知っていたのは
限られた上の人たちと入所すぐにグループとして活動していた
Aぇ少年のメンバーくらいだったと思う。
だからこそ当時のメンバーにはたくさん守ってもらった。
正門もその中の一人で、
同期の中でも同い年だったせいか、
かわいがり気質だった二人のせいなのか
私は正門と大吾くんによく懐いていたと思う。
後ろをついて回るようだった私を
「弟(妹)みたいだ」と二人は話していた。
兄への憧れのようなものが、
構ってくれる仲良しの友人たちへの気持ちが、
いつから正門へのものだけ歪んでしまったのかはわからない。
気がついた時には
正門は私の中で特別な人だった。
1回目の失恋はMs.Princessが結成されて
東京に拠点をうつすことが決まった時。
女であることを公表して、
アイドルでいることに人生をかけると誓った。
大学に行くことも、
正門に好きだと伝えることも、
一緒に諦めて気持ちは大阪に残してきたつもりだった。
東京にいる間、
連絡はとっていたけれど前みたいに頻繁に会えるわけでなかったし
気持ちの整理をつけるにはちょうどよかった。
がむしゃられになれるぐらい
忙しかったのも良かったんだと思う。
人生で初めて作った彼氏について話した時に
廉くんに「ええんか?」と聞かれて
ちょっとだけ胸が痛んだけど、
忘れたつもりでいた。
だけど結局彼と別れた時に泣けなくて、
蓋をしていた自分の気持ちに気付いてしまった。
2回目の失恋は同じグループになった時。
メンバーでいなくちゃいけない。
このグループが自分にとっての
ラストチャンスになることはわかっていたから、
膨らみすぎた期待も恋慕も
一晩だけわんわん泣いて捨ててきた。
私は何度、こりずに正門を好きになって
勝手に失恋したら気が済むんだろうか……?
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作者名:くー | 作成日時:2023年11月15日 12時