初恋の人は? - nishimura ページ27
( 西村拓哉 side )
西村「しろちゃーん」
『何?』
事務所に用事があって来たら久しぶりにしろちゃんに会えた。
忙しい彼女とここで会えるのはめずらしくて
声をかけたら次の仕事までの時間をつぶしているというので
彼女が座るソファの隣に腰をおろす。
現在しろちゃんは俺が来るより前に作業していた台本に視線を落としたまま俺の声に返事をした。
西村「構ってーや」
『やってて良いって言ったの西村くんじゃん』
西村「そうやけどさー」
つまらんーと文句を言えば、
優しいしろちゃんは台本を閉じる。
わかっていて拗ねたフリをする。
出会った頃、仲良くなりたくて
逃げられても追っかけていたしろちゃんは
今ではだいぶ打ち解けてくれたと思う。
しろちゃんの視線が俺に向いて
内心嬉しくてたまらなくなった。
たぶんこれは俺だけじゃなくて、
彼女が見ているのが自分だけであればジュニアの大半は喜ぶと思う。
それくらい、しろちゃんは特別な子だから。
西村「恋バナでもしましょ」
『恋バナ流行ってるの?』
西村「流行るとかじゃなくないっすか?」
『いや、まあ、そうだね』
苦笑いぎみに彼女が笑った。
『私何もないから、西村くんが話したいなら聞くけど』
西村「何もないことないやろー」
『ないよ。今はお仕事でいっぱいいっぱいです』
西村「じゃあ、前はあるってことですか?」
『……』
しろちゃんの目が少しだけ揺らぐ。
動揺されたのが意外で、俺のほうが目を丸くした。
西村「あるんですね」
『あるなんて言ってません』
西村「いや!ある反応やったじゃないですか!」
『……そりゃ、私も20代後半ですから。
初恋くらいは済ませてますよ』
俺から目線を逸らした彼女が言い訳を口にするみたいにつぶやく。
西村「へえ〜。誰ですか? 俺が知ってる人?」
『どうだろうね』
西村「正門くん?」
1番思い当たる人を出してみた。
2人のことは昔、付き合っているんだと思っていた。
グループになる前からよく一緒にいたし、
関西合同でのライブなんかでも
2人は特別、何か関係があるように見えていた気がする。
『正門は同期だよ』
西村「だからこそ初恋とかありそうやん」
『残念。ハズレです』
そろそろ行かないと、と時計を見て立ち上がったしろちゃんは『またね』と笑って去って行った。
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作者名:くー | 作成日時:2023年11月15日 12時