憧れの人 - sano ページ12
( 佐野晶哉side )
久しぶりにりりちゃんと2人でご飯に来た。
目の前で綺麗な仕草で食事を口に運ぶこの人を、
出会ってからずーっと綺麗な人だと思ってる。
佐野「りりちゃん」
『んー?』
佐野「2人で来るの久々っすね」
『たしかにそうかも。晶哉くん元気?』
佐野「会ってはいますやん」
『それはそうだね』
ふっと口元を緩めてりりちゃんが笑った。
俺は長くこの人への気持ちを掴みかねてる。
出会った頃から、ずぅっと。
自分の気持ちなのによーわからん。
『晶哉とご飯いくーっていうと、
大晴とか小島がついてくること多いもんねー』
佐野「そう。すぐ邪魔されんねん」
『邪魔とか言ったら怒られるぞ末っ子』
佐野「ええねん。あの人たち俺のこと雑に扱うんですから」
『可愛がってるんでしょ』
彼女がお酒のグラスを持ち上げた。
カラン、と氷の音が耳に響く。
箸を置き、グラスに口をつけるだけでも
サマになってしまうのだからやっぱり綺麗やなと思った。
可愛がってる、と口にされた言葉は
りりちゃんにもきっと当てはまるんや。
弟みたいな。ずっと末っ子、年下扱い。
俺やってもうりりちゃんを甘やかせるくらいは
大人やと思うけど彼女があんましそうさせてくれない。
佐野「可愛がられた記憶ないなぁー」
『気づかれてなくてウケる。
ほら、正門とかは? わかりやすく優しいよ』
佐野「……」
本人がいようといまいとりりちゃんの
口から一番発せられる名前は正門くんやと思う。
りりちゃんがそれに気がついているかはわからんけど。
『晶哉くん?』
佐野「あ、ごめん」
『んーん。……正門は違ったか』
佐野「正門くんは誰にでも優しいじゃないですか」
『みんなの心の実家だからね』
くすくすと笑う彼女への俺の気持ちが
友情だとしても、
グループ愛だとしても、
姉を尊敬してるだとしても、
恋やとしても、
全く同じ気持ちが返ってくることはない気がして
少しだけ心臓が痛くなった。
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作者名:くー | 作成日時:2023年11月15日 12時